10
9月
なぜ今、富裕層はバウハウス家具を選ぶのか?
家具に十分な予算をかけられる人にとって、選択肢は少なくありません。世界的なラグジュアリーブランド、職人によるオーダー家具、ヴィンテージ、現代のデザイナーズ家具。その中で、なぜ一世紀近く前に生まれたバウハウスやモダニズムの家具が、今も選択肢になり続けているのでしょうか。
理由を単純に「高級だから」と説明することはできません。むしろ注目したいのは、価格そのものよりも、その家具がどのような思想から生まれ、どのような素材と構造でつくられ、空間の中でどう存在するのかまで含めて選ぶという価値基準です。
この記事で考えたいのは、「富裕層だから高価な家具を買う」という話ではありません。数多くの選択肢を持つ人が家具を選ぶとき、何を基準にすれば、価格や流行だけに左右されない一脚にたどり着けるのか。その視点から、バウハウス家具が現在も選ばれる理由を考えていきます。
目次
01 選択肢が多い人ほど、家具の何を見るのか
家具を探すとき、価格、サイズ、色、座り心地は当然重要です。しかし、予算の範囲が広がるほど、単純に「高いものを選べばよい」という話ではなくなります。同じ価格帯にも異なるブランドがあり、伝統的な家具もあれば、現代のデザイナーズ家具もあります。オーダーという選択肢もあります。
そこで必要になるのが、価格とは別の判断基準です。たとえば、なぜこの形になったのか。どのような素材が使われているのか。構造はどうなっているのか。空間に置いたとき、建築やほかの家具とどのような関係をつくるのか。そして、長く使うことを前提にできるのか。
こうした視点で家具を見ると、ブランド名や価格だけでは見えなかった違いが現れてきます。バウハウス家具が興味深いのは、その違いを比較するための手掛かりが、家具そのものに表れていることです。装飾によって価値を示すのではなく、構造、素材、線、面、プロポーションによって成立する。
「何が付け加えられているか」ではなく、「なぜこの形なのか」から家具を見ることができる。
これは、選択肢が多い人にとって一つの明確な判断軸になります。
02 100年前のデザインが、なぜ今も選択肢になるのか
バウハウスは1919年、ドイツのヴァイマールで設立された造形学校です。建築、工芸、美術、デザインを横断しながら、芸術と技術、そして近代的な生産との新しい関係を模索しました。その影響は建築だけではありません。家具、照明、タイポグラフィ、プロダクトデザインなど、現代の生活を取り巻くさまざまな分野に残っています。
家具では、マルセル・ブロイヤーによるスチールパイプ家具や、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが手がけた椅子などが、モダニズムを代表するデザインとして知られています。ここで興味深いのは、それらが「昔の家具」として歴史の中だけに存在しているわけではないことです。新しいデザインが次々と生まれる現在でも、こうした家具は住宅、オフィス、ホテルなどの現代的な空間に取り入れられています。
その理由の一つは、装飾や一時的な流行に強く依存せず、構造と素材そのものをデザインの重要な要素としていることにあります。スチール、レザー、ガラスなど、それぞれの素材が持つ性質を隠すのではなく、形の一部として見せる。線と面を整理し、必要な構造そのものを造形として成立させる。だからこそ、周囲のインテリアが変化しても、特定の時代の装飾様式だけに閉じ込められにくいのです。
「今選ばれているから価値がある」のではありません。
一世紀近くにわたって異なる時代の空間で使われてきたデザインを、現在の暮らしの中でも改めて検討できること。
そこに、バウハウス家具の大きな特徴があります。
03 高級であることより、素材・構造・プロポーションを見る
高価な家具であることと、優れた家具であることは同じではありません。価格には、素材、製造方法、ブランド、流通、製造国、販売サービスなど、さまざまな要素が含まれます。だからこそ、価格だけで品質を判断するのではなく、「その価格の背景に何があるのか」を見る必要があります。
バウハウスやモダニズムの名作をもとにした家具には、さまざまなメーカーの製品が存在し、価格にも大きな幅があります。外観が似ていても、実際のつくりが同じとは限りません。たとえばスチールフレームなら、パイプやフラットバーの形状、接合方法、溶接や研磨、表面の仕上げなどを見ることができます。レザーを使った家具なら、革の種類だけでなく、縫製、張り方、クッションとの組み合わせによっても、座ったときの感覚や外観は変わります。
そして、名作家具を比較するときに忘れてはいけないのがプロポーションです。座面の高さ、背もたれの角度、フレームの太さ、クッションの厚み、各部分の間に生まれる余白。一つひとつは小さな違いでも、それらが重なることで家具全体の印象は変わります。特に造形がシンプルな家具では、余計な装飾がない分、こうした差がそのまま佇まいに現れます。
つまり、同じデザインをもとにした家具を比べるとき、本当に確認したいのは「どちらが高いか」ではありません。
何が違うから、その価格になるのか。
価格を判断する前に素材と構造を見ることが、家具選びの精度を高めます。
04 家具を単体ではなく、空間との関係から選ぶ
名作家具を選ぶとき、家具そのものの美しさだけを見てしまうことがあります。しかし、家具は展示台の上に置くオブジェではありません。実際には、床、壁、窓、光、ほかの家具、そして人が動くための余白の中に置かれます。そのため、優れた椅子であっても、空間とのバランスが合わなければ、その良さが十分に生かされないことがあります。
バウハウスやモダニズムの家具には、この「空間との関係」を考えやすいものが多くあります。たとえば細いスチールパイプによって構成された椅子は、床や壁への視線を完全に遮らず、家具の向こう側まで空間を感じさせます。一方、レザーと金属を組み合わせた存在感のあるラウンジチェアでは、家具そのものが空間の重心になることもあります。
どちらが優れているという話ではありません。重要なのは、家具単体ではなく、自分の空間の中でどう見えるかを考えることです。
これは日本の住宅でバウハウス家具を取り入れる場合にも重要です。「バウハウスだから日本の住宅に合う」と一括りにすることはできません。部屋の広さ、天井高、床材、壁、自然光、周囲の家具、そして家具同士の距離によって印象は変わります。
大きなラウンジチェアを置くなら、その家具自体の寸法だけでなく、周囲にどれだけ余白を残せるかも考える必要があります。反対に、線の細いスチール家具なら、限られた空間でも視覚的な圧迫感を抑えられる場合があります。
高価な家具を置くことによって空間の「格」をつくるのではなく、その空間に必要な家具を選ぶことで、建築とインテリア全体を整える。
バウハウス家具を選ぶときに大切にしたい視点です。
05 「投資価値」より、長く使える価値を考える
高額な家具について調べていると、「資産価値」や「投資価値」という言葉を目にすることがあります。確かに、ヴィンテージ家具や一部のデザイナーズ家具には中古市場が存在します。
しかし、将来の価格は、メーカー、製造年代、状態、希少性、市場での需要など多くの条件に左右されます。そのため、「バウハウス家具を買えば価値が上がる」と考えることはできません。
家具を選ぶときに、より現実的に考えたいのは、購入後にどれだけ長く使えるのかということです。
ここで見るべきなのは、単純な耐用年数だけではありません。構造に無理がないか。素材は使用目的に合っているか。必要になったときに修理やメンテナンスができるか。レザーやファブリックなど、時間とともに変化する素材とどう付き合っていけるか。
購入価格だけではなく、使用する時間まで含めて考えると、家具の見方は変わります。
これはリプロダクトを選ぶ場合にも同じです。「リプロダクトだから良い」「リプロダクトだから悪い」と名前だけで判断するのではなく、その製品がどのようにつくられているかを見る必要があります。
フレーム、素材、内部構造、縫製、プロポーション、仕上げ。そして販売後の保証やメンテナンス体制。同じ名作デザインをもとにしていても、製品によって仕様は異なります。
だからこそ、価格だけを比較するのではなく、長く付き合える家具として何が提供されているのかを確認することが大切です。
06 なぜ今、バウハウス家具が選択肢に残るのか
ここまで見てくると、「富裕層がバウハウス家具を選ぶ」という言葉の意味も少し違って見えてきます。富裕層だからバウハウス家具を選ぶわけではありません。高価だから選ぶわけでもありません。
むしろ、家具に使える予算が増え、ブランド、オーダー家具、ヴィンテージ、現代デザインなど選択肢が広がったとき、最後に必要になるのは「何を基準に選ぶか」です。
デザインが生まれた背景。素材と構造。プロポーション。建築や空間との関係。そして、購入したあとも長く使っていけるかどうか。
こうした条件を一つずつ見ていくと、バウハウスやモダニズムの家具が、現在でも検討する価値のある選択肢として残っている理由が見えてきます。それは、誰かに豊かさを示すための家具というより、自分が何を基準に空間をつくるのかを表す家具と考えた方が近いでしょう。
新しい家具が次々と生まれ、インテリアの流行も変化していく現在。その中で、一世紀近く前に生まれた家具をあえて選ぶ。そこには、単なる懐古趣味ではなく、流行とは別の基準で家具を見ようとする姿勢があります。
バウハウス家具を検討するときは、名前や価格だけを見るのではなく、
どのようにつくられているか。
どのような素材が使われているか。
自分の空間でどう見えるか。
そして、長く使っていけるか。
この四つを確認してみてください。多くの選択肢があるからこそ、最後に残るのは価格ではなく、自分自身が納得できる判断基準なのかもしれません。
よくある質問
Q. 日本の住宅にもバウハウス家具は合いますか?
取り入れることは可能ですが、住宅の広さや床材、壁、光、周囲の家具などによって印象は変わります。デザイン名だけで判断せず、家具の寸法やボリューム、周囲に必要な余白まで含めて検討することをおすすめします。
Q. リプロダクトを選ぶときは何を確認すればよいですか?
フレームの素材と加工、レザーやファブリックの仕様、内部構造、縫製、プロポーション、仕上げ、保証やメンテナンス体制などを確認してください。同じデザインをもとにした製品でも、仕様や品質は同じとは限りません。
Q. バウハウス家具には投資価値がありますか?
将来の価格上昇や再販価格を一律に予測することはできません。中古市場での価値はメーカー、年代、状態、希少性、需要などによって変わります。購入時には将来価格だけではなく、品質やメンテナンス性を確認し、長く使える家具かどうかという視点も持つことが大切です。
バウハウスやモダニズムの名作をもとにした家具は、同じデザインに見えても、メーカーによって素材、構造、仕上げ、プロポーションなどに違いがあります。BauhausStyleでは、デザインの名前や外観だけでなく、それぞれの製品の仕様を確認しながら家具選びをご案内しています。
気になるモデルがある場合は、素材や仕様、空間への取り入れ方についてお気軽にご相談ください。




